農業・環境・食品関連トピックス

農業・環境・食品等に関する気になる話題を取り上げます。

米国の食事目標(マクガバン・レポート)とアメリカ人のための食生活指針

1977年に米国でまとめられた食生活指針の報告書「米国の食事目標」(正式名称は"Dietary Goals for the United States")、いわゆる「マクガバン・レポート」に関する解説をまとめます。1980年以降は、その後継として「アメリカ人のための食生活指針」が公表されています。

米国の食事目標(マクガバン・レポート)とは

アメリカ - 食生活指針 - Wikipedia
1977年2月、マクガバン委員会はこの年までに何度も公聴会を開き、そのまとめを「米国の食事目標」(Dietary Goals for the United States)として報告する。これはマクガバン報告、マクガバンレポートとも呼ばれる。
・・・・
1977年12月、「米国の食事目標-第2版」として改訂版が出された。
・・・・
1980年2月、米国農務省(USDA)と米国保健福祉省(HHS)は「アメリカ人のための食生活指針」(Dietary guidelines for Americans)として、病気を予防するための7つの指針を発表する。…以降、5年ごとに改訂されることになる。

(1)1977年のマクガバン報告
・・そのアメリカ上院の提言は12月に改訂第2版として公表された下記の7項目です。

1. 肥満を避けるため、消費熱量と同じだけの熱量しか摂取しないこと。もし肥満になれば、熱量摂取を減らし、消費を増加させること。

2. 複合炭水化物及び「天然に存在する」糖分の摂取量を総摂取量の約28%から48%に増加させること。

3. 精糖及び加工糖の摂取を約45%減らし、総摂取量の約10%とすること。

4. 全脂肪摂取熱量を総摂取量の約40%から約30に減らすこと。

5. 飽和脂肪の摂取量を総摂取量の約10%に減らすこと。ポリ不飽和脂肪とモノ不飽和脂肪の摂取のバランスをとり、それぞれが総摂取熱量の約10%になるようにすること。

6. コレステロール摂取を1日300mgにまで減らすこと。

7. ナトリウムの摂取を制限するため、食塩の摂取を1日5gに減らすこと。
出典 食生活指針について 参考1 「日本型食生活」とはどのようなものですか。 3.アメリカの食生活指針

この中で「7.…食塩の摂取を1日5gに減らすこと」は、日本人の多くにとってはかなり厳しい。
なお「6. コレステロール摂取…」に関する項目は、最近の研究結果をふまえて
アメリカ人のための食生活指針」の2015-2020年版では削除となった。

Amazon.co.jp: 米国の食事目標—米国上院:栄養・人間ニーズ特別委員会の提言 (1980年) (企画調査〈昭和54年度〉): アメリカ合衆国議会上院, 食品産業センター: 本 
「米国の食事目標 第2版」の日本語訳。

 

解説、特にマクガバン・レポートに関する誤解について

マクガバン・レポートの真実 - 火薬と鋼
「マクロビや代替療法では、(マクガバン)報告が伝統的な日本食を理想とすると結論づけたと説明している。元禄時代以前の日本の食事を理想とした、と説明していることも多い。だが、そうした記述は報告には一切存在しない。」

マクガバン報告から考えた日本の食生活 - NATROMの日記
「マクガバンレポートで検索してみると、いろいろ怪しげなサイトが引っかかってくる。」
「2003年の日本の炭水化物の総摂取カロリー比は60%。脂肪は25%。マクガバン・レポートで推奨された通り。1950年の日本では炭水化物が多すぎる。」

幻影随想: マクガバン・レポートとは
「当時のアメリカは肉食中心脂肪たっぷりな食生活が標準的で、それが様々な病気の元になっていた。 その状況を改善するために出されたのがこの報告で、これをもとに何度も改訂を重ねて現在のアメリカの食生活ガイドラインがあるというわけだ。」

マクガバンレポートと今村光一さん そしてその後 - とらねこ日誌
「ところで、日本に於けるマクガバン・レポートの認識がここまでゆがめられてしまったのには、マクロビなどの健康本だけでなく食育本などでも上記のような宣伝文句が繰り返し用いられてきたからだと思います。これは日本の伝統食の良さをアメリカ人も認めている、というわかりやすい根拠としてとても使いやすいモノだったからこそでしょう。」

「日本の伝統食こそ理想の食事」と称賛する、ある報告書に隠された不都合な真実!
マクガバン・レポート」とマクロビ宣伝との関係について。
引用の記載はないが、おそらく前述のサイトの内容をまとめたもの。

アメリカ人のための食生活指針(1980年~)とは

Dietary Guidelines for Americans | Health.gov (ODPHP)
2016年1月、「アメリカ人のための食生活指針」の2015-2020年版公表。
2020年12月、2020-2025年版 が公表されました。(5年ごとに改訂)

2010年版アメリカ人のための食事指針のポイント
以前の2010年版について、2つの大きなテーマは
「体重を維持するためのエネルギー・バランス」
「栄養価の高い食品・飲料の積極的摂取」

アメリカ人のための食生活指針―「健康的な食」を伝える最新のメッセージから学ぶ―
アメリカ人のための食生活指針 第5版」(2000年)の翻訳書。

食事性コレステロール摂取量、政府指針案から上限値撤廃 米国:AFPBB News
米国の食事目標(マクガバン・レポート)以来引き継がれた、コレステロールの摂取制限に関する文言が2015-2020年版では削除となりました。が、
「一方、コレステロールとセットで語られることの多い飽和脂肪については、より厳しい摂取量の制限が求められた。 2010年の指針では、飽和脂肪からのカロリーを一日当たりの全カロリー摂取量の10%とするとしていたが、草案では同8%とされた。」
が、結局は「10%未満」となった。

「米国人のための食生活指針」、糖類摂取量の上限を初めて明記(米国)|ALIC 
「糖類の摂取量については、飽和脂肪酸を含む脂肪と同様、1日当たりの摂取カロリーの10%未満にとどめることが望ましいとされた。指針には、現在の平均的な米国国民の糖類からの1日当たりの摂取カロリーは、13%以上に当たるおよそ270キロカロリーとある。」

参考リンク

ジョージ・マクガヴァン - Wikipedia

United States Senate Select Committee on Nutrition and Human Needs - Wikipedia 
米国上院 栄養・人間ニーズ特別委員会 について。

食生活指針 - Wikipedia
日本、米国、世界保健機関(WHO)の取り組みについて。

食生活指針について - 農林水産省
日本の「食生活指針」10項目(2000年策定)と「日本型食生活」について。

他の国ではどんなフードガイドを用いているの?
アメリカ、イギリス、韓国、シンガポールのフードガイド(食生活指針)を紹介。


2021/1/19 更新